高校を卒業して最初に就職したのは不動産業界ではなく家電量販店でした。元々、人と話をすることが好きだった私は毎日お客様と接客できるこの仕事が大好きでした。しかし、仕事の成果が見えづらく、達成感を感じにくいこともあり5年ほど勤めたのちに退職を決意します。その後、ご縁をいただき地元でも大手の建築不動産会社に転職しました。前職とは畑違いの業界ということもあり、初めは飛び交う専門用語もわからず右往左往するばかり。自分の至らなさで毎日上司に怒られていました。(笑

石の上にも３年という言葉がありますが、とにかく3年は頑張るという気持ち一つで毎日が手探り状態の中、住宅を購入されるお客様と接してきました。
そして3年が5年、7年、10年と時間が経つにつれ、少しづつですがお客様に喜んでいただける営業ができるようになりました。そして気づけば自分も30代後半。この頃から「いつかは地元山梨で自分のお店を」という気持ちが芽生えてきたのです。

「いつかは自分のお店を」という思いは私の中で日増しに強くなっていきます。不動産業界で長く仕事をする中で、信頼できる方々との出会いもたくさんあり、自分が開業する際にはきっと力を貸してくれるであろうという安心感もありました。
それでもいざとなると迷い、なかなか行動に移せません。

そんな時にたまたま参加した宅建業協会主催の開業セミナーの講師から「全てが揃うタイミングで開業できるものではなく、みんな最初は何かが足りない状態。開業は勢いです」という言葉を聞き、これだ！と強く背中を押されたのです。
そして2021年、念願だった自分のお店「もてぎ不動産」をオープンすることになります。

前職で担当させていただき、新築住宅を購入してくださったお客さまがいました。ご夫婦とお子様が１人。奥さまは2人目を妊娠中でした。

何度も打ち合わせをして物件を決め、ご夫婦の希望を聞きなが理想の住宅を二人三脚で作り上げていきます。しかし私の退職時期までに工事が間に合わず、私はご夫婦の新居の完成を見届けることができませんでした。こんなにも後ろ髪を引かれた経験はありません。

そして、つい先日のことです。ご夫婦の新居の前を偶然通りかかったところ、お子さんが外で遊んでいる姿を優しい笑顔で見守っているご夫婦の姿が目に入りました。完成を見届けられなかった自分にずっと後悔をしていましたが、幸せそうなご家族の姿をみて目頭が熱くなるほど感激しました。このご家族が幸せに暮らすためのお手伝いができて本当に良かった、と。